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雑談

昴 忘れ得ぬ人 古都で眠る

昴 忘れ得ぬ人
その人は小柄で何処にでもいるような穏やかな人だった、
言葉遣い一つ取り上げても本当に優しい人だった。

知り合ってからお宅にお邪魔するのに時間は掛からなかった、
中心街から少し東南方向、国道から少し奥に入った閑静な住宅地に
そのお宅は在った。

2戸建ての住宅でお世辞にも豪華な家ではない、ごくありふれた
普通の家だった、手前は賃貸にして奥の家が奥さんとふたりが住む
居宅だった。

本当に財産のある人は、このように質素な生活を営んでいる、偉ぶる
こともなく慎ましやかに生活されていた、見習うことが多かった。

その人はある組織の新しい会長に就任することになった、
「私の力になって支えてくれないか?」前会長の申し出さえも断って
いたほど役職の嫌いな私だったが、その人の申出を断る理由はなかった。

そして傍で支えることになった、元国有企業で大都市の支店のトップの
地位まで上り詰めた人だった、私の好きな土佐は高知の出身だった。

事務所兼住宅を時々お訪ねする様になった、物静かな奥さんの振る舞いは
気品の漂う高貴なものだった。

数年後、奥さんがお亡くなりになり葬儀の後にお宅を訪問した時のこと、
目の前に葬儀告別式の写真ファイルが置かれていた、自然に目が止った、
有名芸能人、知れ渡ったマスコス各社の経営者の名前が列挙されていた。

「写真、凄いですね、それにしてもこの方々は何ですか ?」
「実は娘が谷村新司の嫁なんよ・・・」思いがけないことだった。

それまで、その事について触れることはなかった、否 触れることを避けて
おられたのである。 (娘への気遣いだったのではないか)

組織を離れてからの静かな隠居生活は長くは続かなかったが、さまざまな
薫陶を得たことは私の終生の財産となった。

高齢となり身の回りが不自由と為ったことで、子息の住む東京近郊へ引越し
されて行くことになった、何時かはとおそれていた別れが其処に来ていた。

「ハ~イ! ああ、S君 君か ? お入り・・・」にこやかな笑顔だった、
別れは身を裂くように辛かった、私の師匠にして親父は私の元から去った。

そして静かに奥さんの元へ旅立たれた、学生達が修学旅行で行く古都の小高い
丘の上で静かな眠りについている。

谷村真司の♪ 昴 を聴くと、在りし日師匠と過ごした日々が、会での情景が
浮かんでくる、師匠の住んでいた家はその後取り壊された。

谷村ファンの女性が、
その土地を購入されて、新しい家を建築して生活されている。

♪ 昴
作詞 谷村新司
作曲 谷村新司
歌  谷村新司

奥さんを亡くされたその人は (会長) 私がお訪ねするのを
たいへん喜ばれた、差し向かいの小時間は、時間が緩やかに
流れて、話題は民謡から谷村ワ-ルドへと進んだ・・・

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