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雑談

ひとりで泣くんじゃないよ  しのぶちゃん

見知らぬ山間の町はずっと昔住んでいた故郷の隣町に似ていた、
小さな八百屋さんに入って出始めのデコポンを三個買い求めた。

人懐こい店のおばあさんが皴だらけの手でつり銭をそっと手渡して
くれた。

子供の頃、近所の駄菓子屋に走って飴を買った時の情景が思い
出された、やさしいおばあさんの仕草に愛情が籠もっていた。

垂れ込めていた雨雲から雨が落ちて来たので急いで墓参りを済ませ
車に戻った、カ-ラジオのスイッチを入れると美空ひばりの歌が
流れてきた、珍しい、 ♪ しのぶ だった。

この歌を聴くと思い出す娘が居る、昔、赤提灯の小さな居酒屋に、
伏し目がちで 小柄な女給さんが居た、山深い故郷に、小さな弟妹
達を残し、僅かながら仕送りをしていた。

病弱な父親の話をするとカウンタ-の隅で涙ぐみ、そっとハンカチを
当てて泣いた。
その娘の名前が しのぶ と言って ! お客さんに可愛がられた。

美空ひばりが大好きで、彼女の歌を好んで唄った淋しい男が、二月の
寒い大雪の夜、61才の若さで家具の少ない部屋でひとりさびしく
死んだ。

一生独身で通した彼は孤独のまま、ひばりの歌を抱いて死出の旅に
出た。

あの居酒屋のしのぶと、ひばりの歌を愛した男が何故か浮かんでくる、
私は時々、本人の歌謡ではない市井の人々の歌に耳を傾ける、

そこには、本当の市民の暮らしが見えてくる、ひとひらの歌に想いを
託し、切々と唄う ! ほんまもんの歌がある !?

♪ しのぶ 美空ひばり cover by karaokeZ
  作詞:吉岡 治
  作曲:市川昭介
  歌手:美空ひばり

♪ 吐息まじりに 微笑った
頬に淋しい ほくろがひとつ
どこかおまえに 似ている
似ているようで
酔いにまかせて 抱きよせた
しのぶ…… しのぶ……
小さな爪が ああ 背にいたい ♪

じっくり聴くと 何故か 胸が切なくなってくる
この人の人生が見えてくるような 上手い !?

孤独で口数の少ないその男は
ほんの小さな親切にさえ ありがとうと 言った
あの後姿が 切ない・・・

この ♪ しのぶ は
ひとりぽっちの男が あの世で 
  この世を偲び
唄っているような そんな気がして

更に 切なさがつのる しのぶ …..

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