この道
明日へ続く道、それは始めて目にする凸凹道から
始まった、
我が家の前に幅員4m程の土埃をあげる道が南北に横
たわっていた。
道路の石垣から2mか3m下がった西側に大島へ続く海
が広がっていた。
台風の荒波をもろに受ける石垣はその都度悲鳴をあげて、
所々崩壊した。
中学生になると石垣は強固なコンクリートに補強された、
台風の度、嫁いだ姉の家に避難していたが不要に為った。
隠居の前に道路から浜へ降りるコンクリートの坂道が造
られて、子供達は喜々として海に飛び込んだ。
少年の目にする道は、学校への曲がりくねった道、更に
急傾斜の段畑に向かう山道と続いて行った。
高校生になると片道2時間半の未舗装の道を自転車を漕い
で通うことになる、3年になると1時間半に短縮された。
高校が移動した訳ではない、我々の脚力が強くなって、
自転車を漕ぐスピードが早まったのである。
この道、
友と戯れた遊びの小道、
純粋に学業に励む子供達が、元気に通った学校への道、
そして、大人になって味わう、恋に悩んだ迷い道。
過去を振り返り、童心を懐かしむ、黄昏に惑う別れ道。
この道 森昌子 Mori Masako
作詞:北原白秋
作曲:山田耕筰
幼子、ふたりの兄妹が
母さんに手を引かれて
保育園への石段を登った
その少し前
父さんはあの世に
旅立った
在りし日の
あに と いもうと
母さんと 同じぐらいに
父さんの ほしい きょうだいだった
にいちゃんは 涙をこらえて
必死に
いもうとの 手を ひいた
遠い日の
鎮守の杜の ひとこま
時代は流れて・・・