関東同窓会は200数十人の人いきれで 盛り上がっていた。
田舎の小さな高校の同窓会、 都会へ出た若人達は辛酸を舐めて都会の ジャングルに埋没せずがんばっていた。
我々の同級生は10人ほど、一級下と同じ テ-ブルに席をとった。
後援会長、関東同窓会長、現役校長はじめ 次々と祝辞が述べられる、 ビ-ルで乾杯の音頭、各テ-ブルは郷土の 噂、各人の苦労の数々が飛び出していた。
正面に設えたカラオケコ-ナでは早くも 自慢の歌い手達の美声が上がる。
我々のテ-ブルから指名を受け私が先陣を 切ってマイクを握った。
関東同窓会で必ず唄うと決めていた歌 大川栄策のさざんかの宿 。
悲しい別れの歌 辛い切ない人を恋うる歌 。
今では、人妻になった あの人を偲ぶ歌 。
その女性が会場に来ているのである、 些か興奮し大いに気合の入った私の胸の内。
ところが彼女の姿が見えない・・・
あとから判明したのは、席をはずして外へ 出ていたのである。
姿の消えた人妻の面影を偲んで唄った さざんかの宿
歌と現実が妙にマッチして 切なさが募った 恋歌だった ?
♪ ・・・ 愛しても愛しても
あゝ他人(ひと)の妻
赤く咲いても 冬の花
咲いてさびしい さざんかの宿 ♪
さざんかの宿 大川栄策
胸にツンとくる 懐かしい歌である。