船乗りさんと言っても、渡し舟の魯を漕ぐ人ではない、
手漕ぎの四つ張り網や遠洋漁業の漁師さん、更に外国航路の船員さんと様々な船乗りさんがいる。
私が故郷で仲良くした漁師は、小トロという漁船に乗っていた、竹馬の友は世界を股にかけた外国航路、四国と九州のフェリーの船長さん、従兄弟は外国航路の船長から現在は水先案内人をやっている。
本人は勿論だが奥さん達の苦労は並大抵ではない、
主人の留守の間に子供達の病気、学校での行事、父の不在の家庭は奥さんの頑張りで持っている。
ある時、カウンターに若い二人が腰を下ろした、明日、遠洋漁業に男は港を離れる、無口な彼女の頬が少し青ざめていた。
残された僅かの時間、私はできるだけ二人の時間をセッティングする、数ヶ月の別れを控えているのである、店を後にして夜道を帰る男女のシルエットが夜風に泣いていた。
鳥羽一郎の兄弟酒を聴くと、船乗りさんの歌った演歌を思い出す、その上、船乗りさんには港の女が似合う、楚々としてなのに情熱的な飲み屋の女性たち、いつの夜も男が唄い、そして女が泣いた !
たまには、女がマイクを握った、心の底から求める恋歌、女の歌は男を想ってしのび泣く、
「あんた ! 恋しいよ !」