バーブ佐竹 / 女心の唄
懐かしい人である、苦労人だった。
顔に似合わず女心を唄わせたら天下一品、
彼のショ-が地方都市の広い会場で開催された、
バ-ブさん、絶頂の頃。
ショ-の終わった夜 夜の街へ繰り出した彼は
足どり軽く馴染みのスナックへ向かった、
いささか演歌の上手いマスタ-と意気投合して
付き合いが始まっていた。
「マスタ-あげるよ!」
腕から高価な腕時計を外して
カウンタ-の中のマスタ-に差し出した、
「いいの、こんな高価なもの ?」
男同士の友情がそこにはあった。
・・・・・
外は、雨が静かに降っている、
満開の桜が・・・
恋人同士が、さだめに引き裂かれるように
昨夜からの雨で
その花びらは 終止符を打った、
アスファルト道に無残に横たわった花びら
その いたいけな 白い景色に
ハンカチで涙を拭った 女心を想っていた。
バ-ブ・佐竹
バ-ブさん・・・あの時の腕時計
チクタクと健気に呼吸しています。
桜の花びらと 女心
天国で 歌ってますか・・・
女心の唄 バーブ・佐竹