その名は 小雪
その女性は私の身内の会社の経理を見ている税理士事務所に勤務していた、
月に1~2度、帳簿を見に来ていた。
出会っても会話する訳でもなく、ただ私が気になったことがひとつあった、
彼女は、男性に無関心だったということである。
勿論、私に男としての魅力がなかったといえばそれまでであるが ?
当時では、珍しい部類の、男性に淡々とした女性だった。
年のころ、二十歳前後、清楚なもの静かな女性だった。
それから数年後、私は念願の商売を始めることができた。
ある時、高校の後輩が育ちの良さそうな明るい女性を連れて来た。
後日、女性の方が悩み事の相談に来るようになり、ある時、彼女は
女友達を連れて来店して来た。
数年前に見かけていた税理士事務所の事務員さんだった、既に彼女の
名前は知っていた。
彼女は 「小雪」 こゆき と言った。
その後、後輩と女性との関係が終わりを告げたようで、
小雪ちゃんは、友達の気持ちを伝えに私の元を訪ねて来た。
丁重にそのご返事を述べて、彼女への感謝とした。
ふたりの間である会話がなされたが思い出の彼方に納めて
いる。
北島三郎さんの北島事務所の 山口ひろみ/その名はこゆき
この歌を聴いていて、 ふっと あの頃の彼女のことが思い出された。
彼女の名前も こゆき (小雪)
後ちに思わぬ事実が判明する・・・
老舗の企業の社長がいる、その妻の継母は私の身内である、
社長の妹が、その小雪。
という事は血縁ではないものの 小雪ちゃんは親戚筋に位置して居た。
彼女は、知り得たかどうか分からないが、不思議な因縁だった。
県庁所在地の郊外に閑静な住宅地が在る、
私の知人が手広く事業を展開して時々相談の電話が来る、
彼の家の近く、同じ町内に結婚して苗字の替わった彼女が住んでいる。
落ち着いた、淑やかな主婦だと伝えてくれた。
あの日、カウンター越しに胸を開いてくれた女性は、
私と親戚筋になって、尚且つ触れてはならない永遠のマドンナになった。
寂しげに微笑んだ乙女、静かに店のドアを開けて町へ消えた女、
その名は 小雪 、 触れてはならない女神さん ・・・・・ こゆき・・・・・
♪ その名はこゆき
歌:山口ひろみ
作詞:数丘夕彦
作曲:原譲二
北の女を くどくなら
秋の終わりに するがいい
ひとり冬越す つらさがわかる
女ごころに 日暮れが早い
雨の雨の札幌 とまり木同志
こぼれたお酒で書いた
その名はこゆき
♪ その名はこゆき