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歌謡

はるみの 暗夜航路

「寒いね・・・!」
電話の向こうで姉がつぶやいた、

「風邪はひいてない・・・?」
80歳に手が届いた姉の優しい声だった。

故郷から採れたてのミカンが届いて
そのお礼の電話をかけた時の言葉である。

「みかん採り大変だね! 車 気をつけてよ」
寒風吹き下ろす峠の小道が脳裏に浮かんだ、
この道は不憫だった父母を追った峠の小道。

夕餉の煙が立ちこめて各家庭の窓から
裸電球の灯りが点灯し始めた時刻でもあった、
我が母はその時刻まで野良仕事をしていた。

後ろからついて帰る我が目には、細い母の
小刻みに震える肩が見えた。

理不尽な人生に耐え続けた母の面影は数十年
経っても消えることはない。

ここに、
♪ 暗夜航路 と言う歌がある、
韓国女性 キム・ヨンジャが唄っている。

何故か彼女に、泣きながら唄う彼女に、
母の面影が重なってならない。

母に逢いたくなると、この ♪ 暗夜航路を
聴きにいく、
そしてキム・ヨンジャに母の面影を追う。

「負けるな! 人様を泣かせたらいけんよ。」
理不尽な人生に泣かされ続けた母だったのに
そう言って、肩を押してくれた。

ふぶきにかじかむ峠の小道、
それは石ころ混じりの泣き目坂、

故郷は、
師走の中に、みかんの採り入れで賑わっている。

♪ 暗夜航路
都はるみの歌をお聴きください。

作詞 吉岡 治
作曲 弦 哲也
歌手 キム・ヨンジャ

 ♪ 生きてゆくのが 下手だから
     にがさ重ねて 千鳥足
        ・・・・・

 ♪ 苦労ひろって 港町
     やせたおんなの 縄のれん
        ・・・・・
 

(高齢の母親の) 「面倒をよく見てあげるネ 」
竹馬の友ふたりに言うと・・・
「当たり前よ、親だもの」 と返事が返ってきた。

世情を震撼させる親殺し子殺しの風潮に眉をひそめる私に
彼らは、そのように答えてくれた。
私達の時代の親子関係に現代の鬼畜の仕業は在り得なかった。

親を敬い、子を愛しむ、
そんな時代に生まれた私達は幸せだった。

親と子の絆は地球よりも重い。
古希になった男が自分の母親を懐かしみ逢いたいと願う、
そう思わせてくれる父に母に感謝を捧げたい。

「あなたたちの子供に生んでくれて有難う。」

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