寂れた小さな集落の山道を、肩を落として百姓女が俯いて歩いていた、
その口元にはかすかに歌謡曲が唄われていた、目じりからつっと涙が
一滴落ちた・・・
夕闇迫る田舎の山道は、その女の心そのままに黒く淀んで沈んでいた、
日本がまだ貧しい戦後の傷跡に翻弄されていた時代だった、
貧しい村の悲しい女の物語は平成の時代になっても想い出に霞んでいる。
西の空 大島の頂に夕日が静かに暮れて行った、辛い想いを残して、
幼い子供の胸に 女の嗚咽がいつまでも痞えて、締め付けた !
弦 哲也 作曲 キム・ヨンジャの歌声が あの沈みゆく故郷の夕焼けに
重なってあの日の情景が浮かんで消えない。
女は「Sさん、私は ♪ 君は心の妻だから が好きよ ! いい歌ね 」と
呟いた、
「そうだね !」 答えた私だったが、本当は ♪ 暗夜航路が切ない !
あの日の山道で背の曲がった百姓女の嗚咽は、追憶に霞む 母の姿 !
知らぬ間に、母の年を追っている私がいる、
思い出すと苦労続きの母が瞼の奥に現れる、何故か にっこりと微笑み
そして、うなずいている・・・
今宵は 新二郎の ♪ 暗夜航路を聴いている、
目じりから、一筋 二筋 母恋い 涙が落ちやがる ?
新二郎が 男の弧線を震わせてあの日に引き戻す・・・
弦さんの ギタ-が 新二郎節と噛み合って男の胸をこれでもかと ?
暗夜航路/キム・ヨンジャ songby新二郎
キム・ヨンジャの泣き顔を見ると
まさにあの日に泣いた 母の顔 おふくろに生き写し、
切ないね ・・・ !