「もう来てくれないかな ?」
彼は、不自由な身体で妻に呟いたそうだ !
「来てくれるかな !」
元気な時の口癖だったそうだ、
それが病状が急変した後は諦めの言葉を
吐いたそうである !
九州は別府港のすぐ側で四国Y市行きの
フェリーの航跡が見えるマンションで彼は
故郷を偲んだ。
共に高校生活を送り、
社会に出てからは兄貴分として多くの
後輩達から慕われた。
綺麗どころをはべらせてモテ男の本領を
発揮した、
その彼が亡くなって私は故郷の墓にお参り
した、
「Sよ! 」特徴のある抑揚で私を呼んだ !
見かけは優男だが芯のある男気を備えた男。
その糟糠の妻から電話がかかって来た、
「Sさんに逢いたかったと思います!待って
いました!」
電話口で私は震えた、
「私の消えない後悔です、申し訳ありません」
「Kよ!すまん!」
訪ねたかった、逢いたかった !
男の友情って何なんだ ?
豊後水道は遥か遠かった ! 逢えなかった !
彼の妻との会話は30分に及んだ・・・
俺の友! 俺のダチ! いつまでも友だぜ !
♪ 男の友情が
身を責める !「Sよ!逢いたかった !」
亡くして知る友との友情、頬を刺す風さえ、
身を責める。
今宵の酒は 苦い ?