妹よ
町の東の方に東山と云う小高い丘と奥に連なる嶺が在った。
その中腹には東中学校が一学年十数組のクラスを編成していた。
朝夕の通学時は田舎から出てきた私には壮大な行列と思えた。
幼い兄と妹だった、
比較的低い石段を兄は妹の手を労わるように引いて登った、
兄妹を送ると母ちゃんは叔母さん家の手伝いに出るのが日課
だった。
父ちゃんは少し前に突然亡くなった、母ちゃんの嘆きをふたりは
どんな思いで見ていたのか、それを思うと不憫でならなかった。
幼稚園年長組さんの兄と幼い妹、40年前港町の寂しい風景だった。
フォークグループ かぐや姫の ♪ 神田川に魅せられた私は、
もうひとつの物語 ♪ 妹 に心震わせる。
新聞、テレビで事件事故を知る度に、被害者に女性が居ると何故か
被害者女性の家庭環境を想うのである、妹の居ない私には兄妹の絆
は理解できない。
被害女性が妹だったら耐え難い悲しみと、加害者への怒りと憎しみは
狂わんばかりの怒りに苛まれるだろう ! 妹よ! 妹よ!
しかし社会生活の間にそれに近い感情の女性達はいる。
彼女達の振る舞いや無邪気な表情を追うと、妹の何たるかを知る。
40年の風雪は、妹の手を引いた兄ちゃんとその妹の人生に何を
もたらせたであろうか ?
若くして未亡人となった母は、風の頼りにこの地で生計を立てて
いるという、
祖父母の故郷は海峡の向こう、隔てられた異国の地に在る。
母子三人の人生が豊饒のエピローグであることを祈っている。
♪ 妹
木枯らしの吹く神社境内は、粉雪の舞う山道は、幼い2人には辛い
通園路だった。
母ちゃんと呼び ! しかし、父ちゃんと呼んでみた二人の心情は
余りにも愛しい、40前、父ちゃんと交わした男の望郷子守唄 !
かぐや姫 / 妹
作詩:喜多条 忠
作曲:南こうせつ
YouTubeで ご覧下さい。