その年の夏は、町民が経験したことのない 日照りが続き、
町全体が水に枯渇していた。
柑橘で生計を立てている蜜柑農家は特に 水の確保で目を血走らせていた。
そんな中で人身事故が起きて人々の心は 殺気だった、そうして打ち萎れた。
1人の女性が盆の花火大会を終えると 人知れず駅のホ-ムから夜行列車に乗った。
少し前最愛の母が長患いに命の灯を消した
父の弱々しい声を振り切って故郷を後に したのである。
港町の夜行列車の乗客は限られていた
プラットホ-ムから少し離れた駅舎の陰で ひとりの男が立っていた。
見送る父親に遠慮して女に視線を送った。
JAYWALK / 何も言えなくて…夏
を聴くと
あの日の若い2人の別れを想い出す。
何も言えなくて…夏
ふたりが再会することはなかった。
大阪の地に下りた女にはたくさんの苦労が 待っていた、
言いたくて…夏 は
ハッピ-エンドを運んではくれなかった・・・