途方にくれて
緩やかなコンクリート舗装のずらし
(海岸道路から幅員2m余りの坂道)を
下ると石ころ混じりの砂浜に降りる
その子は泣きべそをかいて佇んでいた
一歩踏み入れた砂浜に続く穏やかな海は
穏やかに凪いでいた
数人の子供達が歓声を上げて泳いでいる
男の子の目の先は子供達の学園広場・・
3つ年上のガキ大将が男の子の参加を
止めていた 陰気なイジメだった
男の子は途方にくれて立ちすくんだ
男は海岸通りを故郷に向かっていた
晩秋の淡い夕日が彼の頬を染めて揺らいだ
そうだったよな、彼は呟くとCDをオンに
和田青児の ♪ エンジンのない舟が流れた
北島事務所地味だが感情のこもった実力派
この歌はいつか必ず大衆の共感を得る
男は和田青児の♪ 忘れ風鈴が1番のレパートリー
そして、地味な ♪ エンジンのない舟が次に
彼の心は過去の幼少期の思い出に踏み込んでいた
男の目は次第に涙で濡れた そうだったよな
込み上げる望郷に男は過去に引きづり込まれていた
あの時は途方にくれ夕日に向かって泣きじゃくった
あの悔しさが男の原点 弱い者に気持ちが傾く契機
隣村の集落を過ぎた、ねずみ島が目に入る次は竜崎
眼下に故郷が迫って来た
和田が抑揚を抑えて男に問いかけるエンジンのない舟
だよな 強くなったもんだ 後輩達が男の帰郷を
待っていた
線香をあげる仏壇の向こうから親父お袋が笑顔を見せた
元気だからね 男はそう呟いて手を合わせた
胸が再び込み上げて来る 途方にくれたずらしは今も
昔のままである
♪ エンジンのない舟 和田青児
作詞 : 山田 孝雄
作曲 :山田 年秋
一度ぜひ聴いてみてください。
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