肌寒い雨が降っている、
風呂から出て少し時間が経っている、湯冷めかな ?
半纏を引っ掛けた。
手紙やハガキを整理していた、通り過ぎた人々が
目の前を通り過ぎる、懐かしいな ?
どうしているかな ?
その中には既に亡くなった人が結構居るのに気がついた、
追憶の彼方からそれらの人々が蘇って来る。
「兄さん!」 若が悲しそうに目を伏せた、
「どうした! 若!」
女房の節が流産した・・・
初めての子供だと仕事帰りに寄ると若は喜んでいた。
なのに、なのによ、節が流産した。
黙って熱燗を一本つけて、若のお猪口に注いでやった !
「兄さん!」 後は言葉にならなかった、
目から涙があふれ出た。
中学を卒業すると山間部の町から若は港町へ出てきた、
家具職人の丁稚奉公だった。
貧しい百姓の長男坊、母はみすぼらしい玄関先から若を
見送った。
「親方さんの言うことを聞いて辛抱するんだよ・・・」
苦節〇年 こうして一人前になって若は節と所帯を持った、
流産の悲しみを乗り越えて、その後、若は三人の男の子に
恵まれた。
あれは、阪神大震災の年、若は苦労を共にした節と子供
たちを残して天国へ旅立った。
憎い病気の所為だった、薬は効かなかった。
若を偲んで聴く歌がある
成世昌平 辛いが聴いてみようか ?
作詞 もず 唱平
作曲 聖川 湧
♪ はぐれコキリコ 成世昌平