春の日差しに相応しい晴れ舞台がその男の前に開けた。
どこにいても人の気遣いをして穏やかさを心がけた男だが、
私は時に手を差し伸べ、ある時は突き放した、
ある年度の終わりの会の後の懇親会で、
いささか酔って、悲しい心情を垣間見せるように私の傍に
来た男は目が少し充血していた。
酒のせいだけではないことは前後の脈絡で知り得た私だが、
あえて厳しく突き放した、あの時の淋しそうな顔を忘れない。
自分の気持ちを伝えられないもどかしさに、更に目は充血
していた。
その時、キツイおっさんだなと不愉快になったことだろう、
しかし、私はその後もフォロ-しなかった。
順風満帆の年月にひとつやふたつ苦労が有っても良い !
自分自身、数々の困難を自力で乗り越えただけに、彼の
成長の為にプラスになる、私はそのように考えていた。
その経験をどう受け取ったかは、まだ聞いたことはない。
「栄冠は君の頭上に輝く」
なるべくしてなった努力の帰結、彼の地道な頭を下げる
行程がこの栄冠を勝ち取ったのである。
飲み会の時、
東京出張の空の下、その居酒屋で、我が街のスナックで
一緒に飲んだ時、彼はマイクを握った。
彼の十八番の歌がある、
私も大好きな北島三郎 サブちゃんの持ち歌 !
今宵は彼の人知れぬ汗と涙、四季折々の胸の内を偲んで
北島演歌「♪ 北の漁場 」 に耳を傾ける。
「よかった!」 人生の晴れ舞台に、袖の下からしかっと
見届けたいと思う。
♪ 北の漁場 北島三郎
作詞:新條 カオル
作曲:桜田 誠一
北島三郎 – 北の漁場
You Tube でご覧ください。