20年ぶりに再会した若者は40代の経営者になっていた。
彼と初めて出会った時、彼は一介の下積みの最中だった、キラキラと輝く目が印象的で、素直な姿を見せてくれた。
その後、生活に追われガンと云う難病に立ち向かう私の視野から彼の面影を追う余裕が失われて行った。
彼が歩んだ事業の関係者に会うとあの純朴な男の笑顔が浮かんで来て(どうしているだろう? 元気だろうか!競争の激しい世界に踏みとどまっているだろうか?) 私の心が再び問うていた。
偶然空手の師範の紹介で仕事が舞い込んで来て、その打ち合わせの席に20年の歳月を経て彼は現れたのである。
「Sさんの事覚えていますよ、携帯の番号も携帯に入っています !」
あの頃に比べてやや頬が膨らんでいるが澄んだ瞳はあの頃のままだ。
私の仕事の一翼を担う立場に彼はいた、重複する面が有ったので彼にその仕事を譲ることにした。
「関連するからA君おやりよ・・・」少しでも助かるだろうからと、ご祝儀の気持ちで譲ったのである。
「仕事が忙しいのでやってもらうと助かるから!」
気兼ねをする彼に配慮して、その理由を付け足した。
「Aくん、歳は幾つになったの ?」「ハイ! 何歳です」わが子と同じ年代に感情も揺れた !
応援することを約束して、握手して別れた、女性担当者は男同士のふれあいに言葉もなく控えていた。
親子ほどの歳の違う男同士、夜半、突風が通り過ぎた我が家の庭から虫達の声が聞こえる、静かになった雨が遠慮がちに息を殺した。
男の友情 !
20年前の、あの日を振り返っていた、男の道は茨道、支える杖が有れば差し出してやろう !
♪ 友よ 土の中はさむいのだろうか
・・・・・
こおろぎの よちよち登る 友の墓石(いし) ♪
男の友情 船村 徹 北島三郎 鳥羽一郎
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