夏の日の海岸通は波静かな景色と照りつける太陽とで
学生達の詰襟も汗に濡れていた。
男の学生3人は、遅刻するかも知れないと思いながら
それでもゆったりとぺタルを漕いでいた。
(なあに何時もの事、どうせ嫌な数学の時間だ遅れて行こう)
1年の純真な頃と違って3年になった彼らに決まりはそれ程
関係なかった。
特に番長Mは、ふてぶてしい気持ちで学校へ向かっていた。
周辺の学生に広く知れ渡り、K校のMで通っていた。
すれ違う学生たちが畏怖の念で頭を下げる、それには見向きも
せずMはぺタルをこいでいた。
「オ-ス!」
前から4~5人連れ、H校柔道部主将Kがにこやかに挨拶した、
Mの兄嫁が独身時代にKの会社に勤めており、その関係で2人は
仲が良かった。
「オス!」
にやりと笑ってお互いはすれ違った。
良き時代の港町だった、各校入れ乱れた男同士の絆があちこちで
生まれていた、当然 諍い、喧嘩も多発することになる。
巷で、フランク永井に対抗するように三船 浩という低音歌手が
男の歌を唄って喝采を浴びていた。
今、思い出しても3人はませていた (大人びていた) この歌手
三船 浩 の歌を、低音をまねて唄ったものである。
あの頃の港町、白波あがる宇〇海を思い浮かべながら、
番長M 昨年末糟糠の妻を亡くしたY、そして私U
あの学生時代を振り返ってその歌声に耳を傾けて見たい。
♪ サワ-グラスの哀愁