西日の差す大きめの窓ガラスのその喫茶店は
クラッシック調の落ち着いた憩いの店だった。
年に不釣合いな私は夕方又は夜ひとりでその
2階の西側の席に座った。
少し斜め前に当時では最高のジュ-クボックスが
デンと置かれていた。
物珍しさもあってリクエストが途絶えることは
なかった。
私の目当ての曲は、夜空のドランペットか又は
洋画大砂塵の主題歌、ジャニ-・ギタ-に
大体 決まっていた。
漠然と云うよりも物思いに沈む孤独な男の影が
その背中には滲んでいたと思う。
男24の夏、港町に夏の賑わいが来ていた、
人生の迷い道。
途方にくれた夏の終わりに、
恋に傷ついた男は、歌にしか頼れない弱さを
抱えていた。
剛毅だったはずが、少しの慰めにさえ震えた、
恋は終わりなき焦燥に 我が身を責めた。
スチールギター ジャニー・ギター