観光バスは谷あいの山道を走っていた。
楽しい同級会は旅館へ向っていたのである。
数十年ぶりに懐かしい人(女性) が車中にいた。
私の行き方に大きく影響した初恋の人である。
勉強の出来る手の届かない女性だった、
質素なその佇まいはまるで女神のようだった。
カラオケのマイクは私に順番が廻ってきた、
何曲か選曲していたのだが、ある歌に決めた。
バスの中は喧騒とカラオケでお祭り騒ぎ !
イントロが流れ始めた・・・
同級生でこの歌を知るのは極僅かでほとんど
知らないようだった。
騒がしい中で ひとり静かに 耳を傾ける
人がいた、その女性である。
視線は私に向いていた、「がんばって !」
忘れ風鈴 和田青児