親父の酒場
小さな路地を奥に数十メ-トル進むと石垣沿いにその酒場は在った、
年老いた親父さんと面倒見の良い女将さんが仲良く迎えてくれた。
間口一間 カウンタに5人も座れば満杯、狭いながらも暖かな
雰囲気の店、奥に小さな小部屋があって庶民的なつくりだった。
Sは、口数の少ない親父さんが好きで、時々覗いていた。
昔はやんちゃもんが恐れた鬼刑事、今では虫も殺さぬ好々爺だ、
それが親父さんだった。
相性と言う、どうにも説明できぬ男の絆、たまらなかったね、
だから、その店に来る客とはどういう訳かウマが合った。
女の話はご法度だったが、べつに嫌いという訳でもない、
親父さんと一杯やりながら話をするだけで満足していたのである。
馴染みの漁船員のKさんが先客だった、
目つきの鋭い男伊達、身体は小柄だが俊敏で喧嘩の強い男だった、
奇妙にウマが合う、ツ-とカ-ですべてが通じた。
「Kさん、今度はゆっくりかい・・・?」
「そうだよ、後から行くよ !」
酒場 ここは、裏町の酒場
石垣が覆いかぶさるようにせり出している。
狭い路地だ、この路地で呑み助たちが肩怒らせて喧嘩した、
「よしな !」 仕舞いに親父さんの出番が合って、喧嘩はやんだ。
男と女
他所の店の女達が男と肩を並べて親父さんの店の暖簾をくぐった、
一夜の恋が芽生えて、そして別れの朝を迎えた。
酒場は、そんな男女の面影を忍ばせて、過去からよみがえる。
ちょっと、聴いてみようか ?
Kと女を思い出すな、 遠い昔のことだものなァ・・・!?
酒場