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雑記

村の祭りの芝居小屋 故郷は遠くに

250軒余りの田舎の集落に娯楽は限られていた、
朝夕のひと時に村人達は雑談に興じて社会を論じた。

「どこそこの息子に嫁が決まったと・・」
「おおそうか、内の娘も年頃で誰か婿を世話してくれや」

「ゆんべ、元山の船が大漁だったそうな、」
「おおそうかや、柳澤のトロは、どうやったかの ?」

「船員が足らんと言って探しとったわ、われ行かんか?」

愛媛県の南予地方の方言丸出しで村人は噂話に花が咲く、
のどかな半農半漁の村は、平凡な明け暮れを続けていた。

「おおい、楠本の◯◯さんが、芝居小屋を造ったぞ!」
少しの出来事でも村人にとっては大ごと (大仕事) である。
村に無かった娯楽の殿堂 芝居小屋、それは何処だ ?

それは、とりもなおさず新しい歴史の夜明けになった。

この小さな集落は、北側から見て小島を望んだ10軒に
満たない◯釜、農協が在って昔製糸工場が栄えた◯◯代、
そして数十軒の小◯代部落の3部落から成り立って居た。

その芝居小屋は、マホラン工場跡を改修して完成させた、
座主は、田舎では進取の気質に富んだ楠本の◯◯である。

その田舎にあっては大きな建物で座席部分は余裕を持って
ゆったりと構えた立派なもので、当時の芝居興行は親族
家族単位の一座が群雄割拠の状況を態していた時代だった。

一度来ると数日から一週間程居座って芝居興行を敢行した。

娯楽のない田舎の事である、百姓の山仕事、漁業の四つ張り
網を済ませた村人達が一升瓶片手に、スルメを齧りながら
拍手喝采してよろこんだ。

男前の座長に惚れ込んで、次の興行地まで後を追った娘が
いたかと思うと、綺麗な女役者に横恋慕して嫁さんと揉めた
男がでたり、それまで平和だった村は、てんやわんやの
騒動があちらこちらで繰り広げられた。

しかし時代の流れと戦後も時間が経つほどにそんなブーム
も下火になって行く。

座主の経営感覚は留まる事を知らず、次の事業に方向転換
する事で千秋楽を迎える事になった。

映画全盛の夜明けが其処に来ていたのである。

村は、蚕から芋麦、更に天皇杯を受賞する蜜柑栽培に移行
して農協組織が拡大強化され豊かな村落が形成されていく、

村の農業を、娯楽、消費の面で支えた事業家楠本はその後
映画館、食料品店と事業を拡大し、村の発展に大きく寄与
して行った。

現在、その事業は次男 うさ◯ が しっかりと守っている。
私にとって、かけがえのない竹馬の友である。

鎮守の森の春祭り、座敷雛の季節が其処に来ている。

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