♪ 江の島悲歌
私には4人の姉が居たが、幼い子供達をのこしてふたりの姉は
亡くなった、
現在ふたりの姉がふるさとで共に80歳を越えて健在である。
私が生まれた頃は敗戦の傷跡が大きな影を落としていた時代で
半農半漁の村は年がら年中 貧しさに喘いでいた。
♪ リンゴの歌 ♪ 酒は涙か溜息か ♪ 越後獅子の歌
村人達はラジオから流れてくる歌に一喜一憂しながら聴いた、
生活苦の中でささやかに潤してくれる癒しの時間だった。
歳の離れた姉のいる私も、姉達を通じて歌謡曲に触れていた。
菅原都々子 ♪ 江ノ島悲歌(エレジ-) ♪ 連絡船の歌
そんな時、独特の節回し哀愁漂う彼女の歌声は子供心に何故か
しみ込んで行った。
「どうしてこのお姉ちゃんはいつも悲しそうに唄うのだろう?」
眉を寄せて唄う彼女を見て、どういう訳か可哀想でならなかった。
民族の狭間で、海峡を越えて、叫ぶ彼女の情歌は、子供の心を
激しく叩いた。
大人になってから、彼女の歌に深い意味合いがあることを知った、
見事に情感の伴った歌 ! 心を揺すぶられる歌 !
今テレビでお目にかかる度にその余生の安らかなことを願っている。
子供心に聴いていた流行歌は、幾つになっても忘れることはない、
そのメロディ-、歌詞が望郷と重なって昔の時代に引き戻す。
江ノ島の名前は、亡き鎌倉の恩師の思い出とともに消えることはない。
♪ 江ノ島悲歌(エレジ-)
作詞 大高ひさを
作曲 倉若晴生
歌 菅原都々子
♪ 恋の片瀬の 浜ちどり
泣けば未練の ますものを
今宵なげきの 桟橋の
月にくずれる わが影よ
♪ 江の島悲歌