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歌謡

遠い日の思いで 純子

純子
その子には、歳の離れた姉と兄がいて優しいお母さんが居た、
どういう訳かお父さんの姿は見えなかった。

戦後の混乱期、村の共同体はその時代を反映して貧しかったが父親の
居ない家庭は殊更質素で慎ましやかな生活を営んでいた。

三人の姉弟は、控えめな母親の子育ての所為も有って苦労を表には
出さない、物静かな生活を送っていた。
村の中腹に在る小さな借家が母と子4人家族のささやかな城だった。

古い平屋建て西側に面して左程大きくはないが小窓が開けていた、
下の家が一段下がっているため西側全面に宇和海が広がって見えた。

大島が見えて、その左手前にふたつのかぶ 島が見える、どこからか
小鳥達のさえずりが聞こえて来る。

天気のよい日、晴天の日にはその海のずっと西方向に未だ見ぬ九州
佐賀関の煙突がかすかに見えることがあった。

母は慎ましやかな女性だった、実家は妹が婿さんを迎えて農業を
営んでいた、長女は裕福な大規模経営の蜜柑農家に嫁いでいた。

しかし、母の偉かったことは、その身内に甘えることなく3人の
子供を教育して行ったことである。

母の子育ては辛苦の一字だったと思う、その涙を子供達に見せることは
なかった。

姉さんと同級生だった私は子供心にその家族の心配をして、いつも心に
留めていた。
今で言えば、さしずめ「頑張ってよ! 苦労に負けないでね !」の想い。

子供の願いが届くはずもないが、私にとっては永遠に応援したい家族だった。

母は、ふるさとで勤めた組合の定年を待って関西の兄の家に移り住んだが
子育てに人生を捧げた寡黙な母は、その後楽しむ余裕もなく生涯を閉じる
ことになった。
その後を兄が追うことになろうとは想像さえも出来なかった。

純子は最愛の伴侶も喪った、人生は暗転したが優しい姉の眼差しがかろうじて
壊れる心を踏み留めてくれた。

安田祥子 由紀さおり 姉妹のように
どこかの老人ホ-ムで、孤独なお年寄りのためにピアノ伴奏で歌を唄う
姉妹の姿が見えるかもしれません・・・

じゅんちゃん、純子 あなた達の人生で今が一番幸せなひと時なのかも
知れませんね、
お母さんが天国で、きっと耳を澄ませて聴いていることでしょう。

私にとっての慰めは、彼女と私の従兄の長男が幼馴染で常に連絡を取り合う
仲間だと云うことである。

あなたの頑張りに祝福を、私Sは心を込めて小林旭の ♪ 純子を送ります。

♪ 純子  小林 旭
  作詞 遠藤 実
  作曲 遠藤 実

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