心が沈むと何故か想い出にすがりたくなる、
それは人間の弱さ、私も御多分に洩れない、
篠の降る雨が更にその感を強くする。
設計図面から目を外して窓の外を眺めて見た、
根を詰めて仕事に没頭していたことに気がつく。
重い雨雲が空一面を覆っている、
人間の喜怒哀楽を象徴するように、泣の試練が
回ってきていることに気がついた。
ふっと高校時代にのめり込んだ低音の魅力、
フランク永井が頭をかすめた。
小僧のくせに、いっちょまえに 無理に声を抑えて
フランク節を唸った、自転車通学の途上のことだ。
♪ 羽田発7時50分
♪ 公園の手品師
♪ 夜霧に消えたチャコ
♪ こいさんのラブコール
♪ 夜霧の第二国道
今考えると良くぞ高校生の分際で歌ったものよ ?
平和な良き時代だったのだろう !
当時の片想いと自分を重ね、メロドラマの主人公
気取りが笑わせる ?
あんな時代もあったのだ、その頃の通学路の風景が
蘇る、たいこまん(大判焼) や チャンポンを食べに
小さなお店へ、ほとんどおばあちゃん達が店を切り
盛りしていた。
家が貧乏で一度として同行したことのない友もいた、
我々が店に入るのを横目に見て、頬を赤くしながら、
淋しげに下を向いて、自転車を漕いで去って行った。
その彼は若くして、独身のまま亡くなりました、
今であれば奢ってやろうかと声をかけられたものを ?
その時、未熟な学生に、友を思いやる余裕はなかった、
悔やまれる後悔である、おごってあげれば良かった!?
フランク永井の歌に耳を傾けよう・・・
♪ 俺は淋しいんだ
作詞:佐伯孝夫
作曲:渡久地政信