夜の飲み屋街は、健気に生きる女達の胸に秘める涙で濡れる。
港町の夜空に咲いた恋の仇花、薄幸の女達の悲しい物語は
どんなに月日が経っても忘れることが出来ない。
陰と陽 静と動 それは表面的だけで見る場合と内外の違いを
見落とす場合がある。
苦労と隣り合わせの女性に陰陽混濁が見られた、それは苦労の
度合いが強かったからだろう ?
自分達の店が終わるとひとりの独身男性を連れてくるお姉さん
達がいた、明るいお姉さんと、傍で控えているおとなしい女、
男を立てる気立ての優しい妹分、この女性が今夜の主人公。
慣れるまでは私に対して遠慮気味だったが、来る回数が増えて
慣れるほどに、笑顔を見せるようになった、冗談も出た。
その男性客は、自営の商売人、叔父さんの店を手伝っていた、
私の兄の勤め先の出入り業者、兄の仲立ちで知り合った好男子
だった、名前はA。
お姉さんは旦那のいる身、もうひとりの女性は時間が経たないと
判別しなかったが、離婚してひとりの子供を育てていた。
しばらくしてAと男女の仲になったことを知った。
しかし、夜の川は、薄情川、別れが忍び寄るのも早かった、
男に結婚相手が現れたのである、女の悲嘆は見るも無残だった。
港町に咲いた恋花は冬の訪れと共に消えていく、悲しみに悶える
女の姿が哀れだった。
その当時、彼女達の辛さを思いやり、その悲しみに寄り添うことが
出来なかった男としての限界を悔やむ。
そして心の傷を癒す手助けが出来なかった未熟を恥じている。
お姉さん達のその後の歩みと現在置かれた環境を思いやるのである。
どうか、幸せを掴んでいてほしい、幸せな老後であって欲しい、
Sの切なる願いである、何時の日かまみえる日があれば涙の止まらない
感動の再会となるだろう。
ちあきなおみの歌は
そんな女心を苦しませて夜毎の床を濡らした、花街に流れる歌は
何故にも切ない ?
♪ 酒場川
作詞 石本美由起
作曲 船村徹
唄 ちあきなおみ
あなたの憎くさと いとしさが
からだのなかを 流れます
小犬のように 捨てられた
女の恋の みじめさを
酒と泣きたい 酒場川
香西かおり 酒場川
香西かおり おんなの切なさ
昭和の女の恋は 何故に切なかったのか ?
焦がれて泣いたおんなたち、男に縋った別れ道
夜の川 酒場川の哀歌は あまりにも悲しかった !
演歌は、昔の酒場川に咲いた心温かなお姉さん達を
偲ぶ私のふるさと回帰でもあるのです。