映画 竜二 製作 主演を務めた金子正次は愛媛県松山市出身。
映画完成試写を待って逝去、その後アメリカ映画ブラックレ-ンで名声を博して亡くなった松田優作と仲が良かったことを知る。
竜二は今でも懐かしく語るファンは多い、私などもその1人である、その劇中、竜二の妻 まり子役で高評価を受けた永島暎子について語ってみたい。
この作品に出演の彼女の年齢は幾つだったか知らないが、笑い顔の素晴らしい女性だが、悲しい表情の方が似合う女優さんでもある。
バーゲンセールの肉屋の店先で娘のアヤと並んで順番を待っているまり子、竜二が通りかかって気が付き、立ち止まって妻と子を眺める、
無言のまま見詰め合う2人、竜二の目じりに涙が滲む、後世に語り継がれる名シ-ンである、その金子正次の演技もさることながら私が感動したのは、永島暎子の表情と微妙に揺れる女心のその間である。
男は、こんな女に弱い !
本物のヤクザの女房には、このように男を立てる女性が多いのではないかと、永島暎子を見てそんな気がして来た、絶妙な演技、その表情に男は参る。
男を男と思わぬ女傑が増えて、特に政治の世界で失望させられる事が多い現状を考えると、永島暎子に見る男に縋る儚い女の弱さに憧れさえ覚えて震える・・・そして痺れる !
長渕剛が映画「オルゴール」で自分の別れた妻役に永島暎子を指名したのは金子正次の「竜二」にリスペクトがあったからだと云われている。
もう一度、竜二がヤクザの世界へカムバックすると腹を決めた場面の2人の表情を思い出してもらいたい。
竜次の得もいえぬ目じりに光る涙と出逢った瞬間の喜びから竜次の異変に何かを感じて沈むまり子の切なさ、この映画最高の見せ場である。
男なら一度は経験した女との別れ、余韻が残る名作となった。
男女同権を高らかに謳う向きは反発するだろうが、やはり日本社会は慎ましやかに控える女性が賞賛される、勘違いが至るところに蔓延する日本の社会、ひとつの警鐘になれば幸いである。
リスペクトそれは男だけに与えられるものではない男の陰で男を支える女性にこそ与えられる尊称だと思う。
永島暎子に、永らく忘れていた日本の女性、大和撫子を思い出させてもらった、
感無量である。